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- 2018.09.01 Saturday
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どんなものにだって「飽き」は来る。
「飽き」があるからこそ、人は次に進めるのだろう・・・
だけど、日本人にとって、白いご飯は飽きることがない。これは改めて考えると不思議なことだ。
多少の美味い不味いもたしかにはある。しかし、飯に対してだけは不平をいわず、みんな黙々と口に運ぶではないか・・・。まるで「比較」を口にすることが不敬の罪でもあるかのように。
Bill Evans のピアノも同じだ。どの演奏が良かっただの悪かっただの、「比較」を口にすることは音楽の殉職者に対して失礼なのだ。たしかに "Debby" や "Alice" はジャズワルツの名曲(名演)だけれど、いま耳に入ってくる楽曲が、いつも彼の最高の曲になってしまうのだから、それが本当に不思議なのだ。これって「完成された均一性」を意味しているのだろうか。
それにしても・・・・
How My Heart Sings!・・・こんな綺麗なメロディーはない。
僕は黙々と飯を食う。
・・・ 本当は少し涙目になっていたりするんだな、朝っぱなから。
横ではオカンもただ黙って、飯と味噌汁を交互交互に口に運んでいる。
「これでスタートした一日なんだから、今夜は "Moon Beams" で締めようかな・・・」なんて歯の浮きそうな台詞を思わず口走りそうになったが、そっと引っ込めた。
黙々と聴くがよろし・・・
"How My Heart Sings!”, Riverside, 1962
Bill Evans (pf)
Chuck Israels (b)
Paul Motian (ds)
今朝の一枚は・・・ Blue Mitchell の人気定盤 "Blue's Moods" --- これは誰が何と言おうと、理屈抜きで素晴らしい!
トランペットの音色に派手さはなく、どちらかというと大人しい感じの Blue Mitchell ・・・だからこそ Blue のニックネームなのだとどこかに書いてあったが、本当に聴き易く親しみが持てる。「人懐こい」という形容詞がぴったりかもしれない。
同じテンダー系のトランペットでも Kenny Dorham や Art Farmer は、むしろ夜の部にとっておきたいところだ。一曲目 ”I'll Close My Eyes” 、曲名はあまり朝向きでないけれど、曲調はまさにお目覚めミュージックとして最高、メリハリのよいトランペットの音で、一発で "メガシャキ" になっちゃう。
しばらく聴いていると、横からWynton Kelly のピアノがぐいぐい出てくる。トランペットとピアノがこんなにも個性を主張し合いながらも、お互いを高め合う様は、他の追従を許さない。思わず「ありがとう」と言ってしまう。もちろん、Sam Jones のベース、Roy Brooks の ドラムスも、しっかり全体の曲調を整えながら、ソロ・パートが来ればしっかり自己主張している。これぞジャズってもんだよね。
それにしても、寂しいことに Blue Mitchell のリーダー・アルバムが我が家にはこれ一枚しかない ・・・ 。ブログで取り上げるからには多少とも他のアルバムも聴いておかねばと、さっそく M師匠に頼んで何枚か貸してもらう。
”Boss Horn" や "The Thing To Do"といった BLUENOTE 盤も素晴らしいが、個人的には初期の RIVERSIDE のものが気に入った。
個人的な好みではあるが、豪華な2管、3管編成よりも、少しでも彼のトランペットがフロントから聴こえるもの、端的に言えばとワンホーンこそがお似合いなんじゃないかと思う。"Blue's Moods" の一年前にリリースされた "Blue Soul"(右写真)などは、ワン・ホーン・カルテットの演奏が随所にちりばめてあって、そういう意味では、"Blue's Moods" との繋がりで楽しめる。この盤の #2. The Way You Look Tonight、#3. Park Avenue Petite などは特にお勧め。
地味で味のある人は、他の多くの個性派の中に埋め込まないで、敢えて前面に立っていただくのがいいのだろう。もちろん、これは音楽だけの話でもなく・・・。
Blue's Moods, Riverside RLP9336, 1960
Richard "BLUE" Mitchell (tp)
Wynton Kelly (pf)
Sam Jones (b)
Roy Brooks (ds)
朝方の浅い眠りのヴェールのはるか向こうから、蚊の鳴くようなミュートのトランペットが聴こえてくる。およそあらゆる品格から無縁の、無機質な目覚まし時計のアラーム音で叩き起こされるよりは、ずっとシアワセな朝だと思わなければならない。
パソコンを買った時にオマケでついてきた CREATIVE のミニスピーカーが、我が家の台所のメインオーディオシステムだ。JBLパラゴンで聴くと本当に深い音色に聴こえる Miles のトランペットも、これにかかれば台無しだ。・・・それでも陳腐な情報を繰り返す朝のテレビ番組よりは、はるかにシアワセな舞台装置だと思わなければならない。
「ひろみちゃんがグラミー賞取ったわよ」
「ふーん、それで・・何の賞なんだい?」
「何の賞って?グラミー賞っていえばグラミー賞よ・・・
・・・そうそうB'zの松本クンもね」
あのさ・・・新聞ちゃんと読めよって・・・ちゃーんと書いてあるんだからさ。
それともう一つ・・・「松本ク〜ン」って、オマエさんのお友達なのかい?
コーヒーを啜りながら改めて新聞に目を通す。スタンリー・クラークが貰うにはあと一歩審査員の背中を押す何かが必要だったのだろうか・・・などと考えてしまう。上原ひろみが軸で貰った賞でももちろんないのだろうし。「松本ク〜ン」だってラリー・カールトンとの合わせ技?まま、音を聴いたことないのにあらぬ意味付けはやめておこう。
それにしても・・・
偶然というべきか、昨夜、台所のCDデッキには上原ひろみの "Spiral" が入っていたはず。この偶然をネタにしゃべるところから出発するのが会話の流れっていうもんじゃないのかねぇ・・・CD盤入れ換えて、なんでマイルスなんだろう・・・しかも直球、あまりにも直球! このクソ寒い朝に、マイルスの中期黄金クインテット時代の プリンス・カム をかけるセンスはそうとうブッ飛んでるよな。
これも我が家的シアワセの、一つのカタチだと思わなければならないのだろう・・・きっと。
・・・というわけで、今朝の食卓のテーブル風景でございます。
ヤラセなし!これが我が家のありのままの姿。
「ハンク・モブレイのテナーが綺麗やのに、なんでマイクから遠いんやろ?やっぱりマイルスは優等生のコルトレーンの方がかわいくて前に立たせたんやろかねえ?」
実際この録音では、コルトレーンとフィリー・ジョー・ジョーンズは言わばマイルス・クインテットのゲスト役だ。客人を大切にする意味でもハンク・モブレイは一歩後ろに下げられたのだろうと思うけれど、そう言われて聴けば、たしかにそんな風に聴こえたりもする。
二人して昔からよく聴いてきた盤だけれど、ひょっとしたらボクよりもオカンの方がはるかにこの盤に耳を突っ込んでいたのかもしれない・・・
そうそう・・・もう一つ。この盤を出してくるとジャケットの表紙を飾っているフランシス・テイラーのことを言うのがいつものオカンなのだが、今朝は一言も触れなかった。
Miles Davis Quintet + 2, Columbia.1961
Producer :Teo Macero
Miles Davis (tp)
Hank Mobley (ts)
John Coltrane (ts) only on track 1,5
Wynton Kelly (pf)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds)
Philly Joe Jones (ds) only on "Blues No.2"